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鉄九郎の青?裸々な日常 第53号


2001年7月26日〜8月6日

海とよいどめ

7月26日(木)昨日は丑の日、僕は鳥頭。

7月27日(金)
 フト目をさますと10時すぎ。ゲッ、寝坊したっ。9時に起きて朝ごはん食べようと思ったのに。昨日は昼公演で夕方邦さんとうどんを食べて別れたきりで、飲みにも行かず、ずーっと部屋にこもり仕事をしながらのんびりすごしたので、朝9時には楽勝で起きられると思ったのに。ま、しょうがないわな。そうもウダウダしてられませんよ。今日は移動する日ですから。荷物をしまって準備せにゃ。
 11時すぎに高松駅へ。ヒャーきれいな駅やなぁ。あんまりきれいなんでおなかがすいてきた。ロッテリアでエビバーガーとアイスコーヒーを買い電車の出発までにベンチで朝食。「いしづち11」に乗って一時間半、伊予西条に到着。水の町なんだそうですね。おいしい地ビールもあるんだそうですな。ま、機会があったら今夜にでも・・・。

7月28日(土)
 野菜、やさい、ヤサアイ・・・人に言わせると僕は偏食だそうだ。嫌いな食べ物も多いし、「よくそれで内弟子がつとまりましたね」とまで言われる。そういう話を聞いてみるに、野菜を食することが少ないということらしい。そうなのです、おっしゃるとおりなのです。ここらで心を入れ換えよう。そうでなくとも、巡業にきているのだ。なんだか力つけようと思って、カロリーの高いものばかり食べてしまう情況なのだ。それに元来のラーメン好き。どうしてもラーメン屋の前を素通りできない。こ、これはあぶない。しっかり野菜をとらにゃあと思いましたよ。したがって今日の夕食のテーマは「野菜」。
 野菜いためなんかたべたいんだよなぁ。野菜いためとライスなんざどうでしょ?悪くないよね、生野菜もだんだんに食べますから。ここ松山の繁華街を野菜いため求めてさまよい歩く・・・・しかしね、ないね、ちょっと前までは中華屋というかラーメン屋というと、ラーメン・チャーハンはもちろんのこと野菜いためやもやしいいためにラ イスなんて店がいっぱいあったのに、今はラーメン専門の「らーめん屋」か本格派の「中華飯店」なのだ。中華飯店じゃないんだよなぁ、僕が食べたいのは八宝菜じゃなくて野菜いためなのだ。うーん、ない。どう歩いてみてもない。仕方なくカレー屋に入り(なんでカレー屋に)、「ほうれんそうカレー」と「野菜サラダ」を食す。うーんエライやん、わしって・・・自分の姿というのは見えづらい。

7月29日(日)
 松山だぞなもし。おおっ、大きな街だ。いままでこじんまりしたとこにいたから、急に都会にきて浮き浮きしてしまう。ホテルがまた、便利なとこにあって、窓あけると三越とラフォーレ原宿松山店が見える。銀座4丁目と表参道が一緒になったようなとこだ。マクドナルドに吉野家、なんでもあるぞ(この二つを見付けた時点でなんでもあると判断してしまうあたしって)。
 とにかくブラブラしてみる。邦さんは「歩き」に精を出していることだろう。タカさん(長唄の佐之隆さん)や青ちゃん(同じく長唄の五功次さん)は道後温泉に行っていることだろう。ちょっと歩いて疲れた僕は部屋帰って涼んで昼寝。

7月30日(月)
 昨日楽屋で「野菜野菜」とさわいでいたら河井(お囃子の鳳声晴之)さんが、「朝食のバイキングで野菜いためがあるよ」と言ったので、今朝はがんばって朝食にでかける。あったあったぜ野菜いため。サラダももらっとこ。おっとトマトはよけてと・・・お味噌汁飲みたいなぁ、げっ、茄子がいっぱいや、具が茄子なのかよぉ、お味噌汁断念やなぁ。うーん、あいかわらずやな、わし。

7月31日(火)
出掛ける時間になる。
クーラーのきいた部屋から太陽がいっぱいの世に出る。
目の前の大通りの駅に立つ。
心地よい汗を感じるころ路面電車がやっている。
日傘のおばさんたちのあとから乗り込む。
席があいていても立っていたい。
スティングが歌っている。
ポリス二曲分の旅をすると150円払って降りる。
目の前が文化会館。
ここの楽屋で僕の三味線はおとなしく出番を待っている。
楽屋に入るとき二度目の「おはよう」。
長唄の楽屋前にくる。
三度目は「ごめんやっし、おくれやっし、ごめんやっしー」。

8月1日(水)
 松山最後の公演は昼公演だった。午後4時、部屋に帰りホッとする。午後6時、なにするあてもなく最後の松山を歩いてみる。
 アーケードを歩いていくと、かおる(佐近)さんが歩いてきた。のど乾きましたね、軽く生ビール飲みましょうかと近くの居酒屋さんに入る。気が付いたらお店も閉店になっていた(らしい)。帰りにラーメン食べた(らしい)。寝る寸前にふと思った。6時間もなんの話してたんだろう?声がかれている。「げにまっことこわいこっちゃ」

8月2日(木)
松山から特急に乗った。
真っ青な空。
山間を勢いよく走っていく列車、みどり。
突然視界が広がる、しろ。
海が見えた、青。
遠くまで、パノラマ。
どこに隠れていたんだろ、誰がこんな景色を並べたんだろ、広い海、おだやかな青。
人の顔を優しくさせる青。くよくよしなくなる波。
海を見て生活する人たちがいる。
海を毎日のように見にくる人たちもいる。
灰色に見えたり、真っ赤にみえたりするんだろうな。
僕にはいつだって青。
海を見て育ってないから、偶然みてしまうから。
海が生きていることすら知らない。
息づいていることも気が付かない。
今治にいくんです。
時間はあるんです。
海に会いにいく時間だってたっぷりとれるんです。
でも僕は海を見に行くことはありません。
こうやって時々列車の窓から眺めるだけで。
今までもそうだったしこれからもそうだと思います。
鳥になりたいと思ったことがある人。
魚になりたいと思ったことがある人。
ぬれた翼じゃ飛べない。
息がうまくできなきゃ泳げない。
でも翼はぬれちゃいないし、息も普通にできたんです。それがわかったら海を見にいくかも知れません。
上手に笑えるようになるまで海に行く人がいるように。

8月3日(金)
「海どうだった?」
「かいがらひろったぁ」
「へえ。こわくなかった」
「ひさしぶりのうみなんで、ちょっとこわかったよ。うんとねぇ、どうしてうみがこわいのかわかったよ」
「はいはい聞きましょうか」
「およいでもママのところにいけないときがあるじゃない」
「ああ、流れてるからね、プールみたいにはいかないね」
「うん、あとねぇ、かにさんが、あしをちょっきんとしたらいたいでしょ」
「おおわかるわかる。僕もね、海にこわがらずに入れるようになったのは大人になってからだよ。」
「あはは、かにさんがあたまゴツンってしてきたらどうしゅる?」
「かにさんの方がびっくりすんじゃない?」
「どうして?」
「かにさんとかさ、ちっちゃいじゃない。おまえの方が大きいからさ、かにさんたちの方がほんとはこわいんだよ、きみのことが。だからあんまりこわがんなくてもいいよ」
「ふーん。しょうかぁ」
「そうなのさぁ、かにさんの方がにげてくのさ。な、こわくないだろ」
「うん。じゃあ、あたしがもっとちっちゃくしてればいいね」
「なんのこっちゃ」
「ひゃはははは、あちこちよわいのねっ」
「それを言うなら足腰よわいのねやっ、なんでチャーリー浜なんやっ」

8月4日(土)
 今治から松山通って内子に着いた。駅前に機関車がある。炎天下、今日も暑い。日陰にいてもみるみるシャツの色が濃くなっていく。タクシーで大洲のホテルへ。街道沿いの大型店が近所に数多くある楽しいとこだ。2、3日いたいな。隣にシアターもあるし。
 昔の芝居小屋、内子座。人でこぼれおちそうな客席から舞台を覗くとワクワクしてくる。金丸座、八千代座、嘉穂劇場とあるがここもいい。こんなところで伝の会ができたらなぁ。

8月5日(日)
 私は乗り物酔いが激しい。観光バスとか船とかはもちろん、電車とか飛行機にも酔うことがある。今日はバス移動の日なのである。早起きして朝食を食べ、よいどめを飲み万全の態勢で立ち向かったのだ。なにせ五時間乗るという。えらいこっちゃ。
 トイレ休憩のたびに「顔色悪いですよ」「揺れるなぁ」という中傷にもめげずにいると邦さんが「あつしさぁ、だめだな、後ろの方に座って本読んでたら気持ち悪くなったよ」と決定的なことを言いやがった。うわっ気持ち悪ゥ。けれども薬が良く効いてるのかぐっすり寝て土佐清水に着いた。降りても眠くてしょうがない。仕事も大変。うわっ、久々に飲んだので効きすぎたんかなぁ。フラフラやわ。

8月6日(月)
 昨日のよいどめがまだ効いてそうなので、ええいっとばかりに本日はよいどめなしでバスに乗り込む。三時間未満の移動。ぐーーっすり眠っていつの間にか到着。よいどめいらずや。
 西土佐の星羅四万十というリゾートホテルのような良いところで公演終了まで待機。ここでも布団かけてぐっすり昼寝。楽屋で稽古をしてまた星羅四万十帰って温泉入る。はあ、幸せ。21時30分公演終了。星羅四万十で夕食食べて、一路宇和島のホテルに向かう。40kmあんだって、でもタクシーで40分程度。東京なら三時間はかかるな。

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