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鉄九郎の青?裸々な日常 第61号


2001年11月1日〜10日

Dr.てつくろの「幼児の言語習得過程に関する一考察」


11月1日(木)
いつの間にか、娘がひらがなもカタカナも完璧に読めるようになっていた。
「ラーメン」を「ラーメソ」と読んでいたのが、ちゃんと「ラーメン」と読めるようになった、というように順をおって読めるようになったとも思えない。ジグソーパズルの最後のピースをポンとおいたらモナリザの絵ができたみたいな風に突然パーっと読めるようになったらしい。「カタカナを読みたい」というのが最後のピースだったのか。
ついこないだまで「カタカナは読めないものだ、だって子どもだもの」と思っていたようだ。そばにいてそれは僕も感じていた。なにかが、誰かが「カタカナも読んでいいんだよ」と彼女に耳打ちしたのだろう。
日々、お弟子さんたちをお稽古しているとそれとよく似たことに出会う。三味線のテクニックや間のとりかた、運び方等々、突然できるようになる。もちろん練習で出来るものもたくさんある。でもいくら言葉で教えたって教えられないものがたくさんある。
(松永)和佐次朗さんはそのことを「ひらきなおり」と言っていた。「ひらきなおり」には大きなものから小さなものまでたくさんあると。そして小さな「ひらきなおり」がとても大切なことなのだと。
違う環境でお稽古させたりすると小さな「ひらきなおり」がうまくできたりする。それがおさらい会だ。おさらい会のあとはみんなが少しウマくなっているのはそのせいなのかもしれない。おさらい会は出演者に何かを耳打ちしているのかもしれない。

11月2日(金) お江戸日本橋亭
晴れた晴れたよぉ、よかったぁねぇぇぇ。稽古場寄って荷物を積んで、そうそう三味線破けてないか確認するんですよ、三味線弾きは。仕事に行く朝は必ず調べるんです。ここでもし破けていた日にゃあアータ、一日まーーーっくらでっせーー。まぁ真っ暗になるまえに代わりの三味線を選ばなきゃいけないですけどね。それもさぁ、選べるほどありゃぁいいけどさぁ、アタイなんざ自慢じゃないけど代わりになる三味線がないなんてぇこと、ザラにありまっせー。どうするか?借りるんでさぁ、よく借りまっせーアッシわぁ。まぁ、そんなこたぁいいんですけども、今朝は運良く破けてなかったもんで、こーーーれさいわいと車に積んで、いざ、イザイザ神田にむかうーーーッ。デデンデンデンデン・・・。

今日はね、「新曲浦島」弾かせていただくんですよ、師匠の唄でね。新浦といやぁ、和風師匠(四世松永和風師=先々代家元です。現家元忠五郎師のお父上が先代家元の鉄五郎師、そのお父上が和風師です。)の十八番です。僕はお会いしたことはないんですけど、そりゃあ一世を風靡したんですからね。その和風師の新浦のCDを聞きながら神田に向かいましたよ。舟唄に泣きましたね。なんてイイんだろう。今まで気がつかなかったなぁ。
三味線は先代の(杵屋)五三郎師なんです。これまた良いのですなぁ。「そっかぁ」と思うところがたくさんあって。僕が先日仕入れてきたセリの合方の替手があるんですけどね、変わった替手だなぁと思ってたんですけど、五三郎師、その替手を弾いているじゃあありませんか・・・。びっくりしましたよ。ぞっとしましたよ。うれしい「ぞっと」なんですけどね。
そういうのあんですねぇ。ひょっとしたら僕に教えてくださった人が五三郎師匠から教わったのかもしれないし・・・。なんて考えたらねぇ、いやー、感激ですわな、つながってますわな、これが伝統、これが伝承ですわな。よく簡単に「昔は・・・」なんて言いますが、昔と今というのは確実につながっているんですな(あたりまえだけど)。それがすごいじゃあありませんか。替手だったりノリだったり、節だったり・・・これってずーーーっと昔から伝承されていろんな名人たちに手を加えられて、いろんな方に伝承されて僕にも伝わってくる・・・うーーーっ、スゲーっ。すげーーーよぉ・・・と感動している間に日本橋亭につきました。

さっそく三味線だして、こうかな?ああかな?と弾いてみる。
邦さんが来て、師匠(松永鉄十郎師)がいらして、もうひとつの大曲「船弁慶」のリハを。上調子むずかしい。五挺五枚でお囃子入りの上調子とぜーーんぜん違う。どう処理しよう?どう聞こえるんだろ?もう「?」いっぱいですよ。ボリュームもわからない。今までの上調子と違うぞとぼんやりとは思っていたけど、はっきり知っちゃったよ。エライこっちゃーー。邦さんに迷惑かけないようにせにゃ・・・
「船弁慶」は40分からかかるし「新浦」だって20分近いということもあって、今回は時間との戦いでもある。「よくわかる長唄」もなるたけコンパクトにいかねばなない。
午後2時昼の部開演。たくさんのお客様にいらしていただきスタート。「新浦」、なんかつかんだかも知れない。空調の具合がもう一つで舞台側のをつけないとすごい湿気で、とくに「船弁」は調子がむずかしい。つけるとゴーっと音がする。夜の部はそれでもいい状態で弾きたかったので舞台側の空調をつけていたがアンケートに「空調の音が・・・」と書かれてしまった。日本橋亭さんサイドで大々的に直すそうですので懲りずに来て下さいね。
夜の部の「新浦」、気持ちが良かった。「船弁」、とーーーっても良い演奏だった。弾 いてて感激した。しかし、師匠は独吟で昼夜大曲をふたつ、すっげーなぁ、「死ぬ気で唄ってんだよ」と笑ってたが、すっげーなぁ。

11月3日(祝) 中村座初日(ちなみにほんとの初日は昨日)
おやっ、以外に早く浅草についた。どっかで一服していくか。マック発見。浅草のマクドナルド、何かが違うかな?そんなことあるかいっ、浅草だからって特別なものがあるわけでなし。・・・ グラタンコロッケバーガーとコーヒーを注文。ほらみなさい、どこにでもある商品だし、お姉さんの笑顔もどこのマックとも変わらない。
・・・・おやっ、ちょいっと客層が違うなぁ。そういや子ども連れのお母さんたちがいない なぁ。まあそれは時間帯にもよるんだろうしな。

僕のとなりの席に野球帽かぶった初老のおじさんと連れのおばさんが座った。今日は何曜日かということを話ている。おじさんは休日だと言い、おばさんは土曜日だと言い張る。二人ともどうにもゆずらない。どうなるのかと思って聞いていたら、おじさんが「いや悪かった、俺が間違ってた」と言う。いやっ二人ともあってんだけどなぁと思ったが、まあこれで話が前に進むだろうと思っていたら、おじさん、こともあろうに「今日は日曜日だ」と言い出した。オイオイと思っていると、おばさん何を思ったのか「いやーね、日曜日じゃないわよ」ウンウンそうそう「金曜日なのよ」ガクッ、コーヒーをこぼしそうになった。な、なんだよーこの二人・・・あっ、なんかいたずらの番組か?素人だますやつか?そんなことを考えている間に、おじさんとおばさ んは木曜日の祝日ということで話がおさまりそうになっている。あーーーっもうーっ違うがな、土曜日で祝日だがにゃ。見た目はシラっとしている僕の心の中ではそう叫んでいた。
そのとき「ちょっといい男のおにいちゃん、今日は何曜日だい?」ヨっ、やっと聞いてくれましたかぁ、はぁ、もうさっきから言いたくてしかたがなかったんですよ。とは言わずに「あ、今日は土曜日です。そして祝日です」とスマートに答えた。はぁーーすっきりした。さっ、行こうかな?えっ?なにっ?今度は何の日かについて話している。敬老の日だとおばさんが主張。「バカか?敬老の日は夏だぞ」と、おじさんが反撃。立ち上がりながら「文化の日ですよ」と僕。はあ、すっきりした。

さっ行こうっと・・・背中の方で「文化の日ってなんだ?」「聞いたことないねハハハ」と言っている。ま、まあいいや。
手を洗って帰りがけに何気にそばを通ったら、優勝した野球チームの監督が誰かでそのチーム名がなんとかと言って、昔はなんとかって言ってたんだよとおじさんが熱弁していた。なーーんにもわかんねーじゃねーーかよっ。もうこらえきれなくなった〈いい男のおにいちゃん〉は、「優勝したのはヤクルトスワローズで、監督は若松監督で、昔は国鉄スワローズですがな」と言いに行っ た。

11月4日(日)
おとといの伝の会の時に師匠と邦さんが「そういやぁアツシ、ポリープどうだったんだ?」と聞いた。あっそう言えば結果をきいてなかったなぁ、どうだったんだろ?良性か?そうでないのか?そうでなかったらどうなるのか?
「先生は99%は良性だと思うって言ってたよ」
「いやいや、その1%がな・・・」
「はははは」
二人とも呑気なものだ。まぁ、二人の独特なやさしさではあるのだろうが。
妻が結果を聞いてきてくれて、無事良性と決まった。
「良かったなぁ」のひと言が聞きたくて、楽屋で師匠と邦さんに報告したら 二人ともギロッと振り返って
「そんなことはないだろ」と言っていた。・・・・ど、どういうことよ?

11月5日(月)
娘がひらがな・カタカナが完璧に読めるようになっちゃった、と書いたが、もうひとつ残念(?)なことがある。「ひ」と「し」がちゃんとしてきちゃったことだ。
わざわざ江戸っ子風に「しだりにまがる」とか「かわいいしつじ(ひつじ)」とか言っていた。「かぜしいちゃってさぁ」なんて可愛かったのになぁ。
実は本人もわかってたみたいで「しつじのしは、ほんとはひ?し?」なんて聞いていた。なかなかやるなぁとか思っていた。それがここんとこ「ひだりにまがる」「かわいいひつじ」「かぜをひく」となってしまった。
うーーっ、誰がそんな風におせーてんだあーー。あっ、「おせーる」なんて言ってると「ぱぱ、おしえるっていうんだよ」なんて注意されたりする。うーー、おまえだって、ついこないだまで「おせーてちょーだい」と言っていたのにー。幼稚園がいかんのか?先生に文句言ってみようかな。なんて言おう?
「娘に『ひ』と『し』をちゃんとおせーないでください」
・・・うーん、説得力ないなぁ、へんな親としかうつんないだろーなぁ。
もともとウチでは、カタカナとか外来語なども間違えているものを正さない。
「おふとん」を「おふんと」なんて言うのはおもしろいし、そんなの今のうちだと思えるので、長いこと「おふんと」でいてくれないかなぁとも思う。「ネックレス」を「ネックラス」なんて言ってるのを聞くと笑える。いや、笑えたのだ。「ネックレス」って言うようになっちゃったんだもの。今、大事に僕と妻が見守っている単語は「マガリーン」。もちろん「マーガリン」のことなんだけど、初めて聞いたときには、なんだかわかんなかった。そういうのがおもしろい。
「このぱん(パン)おいしいのよ、なかに、まがりーんがはいってんだよ、グフフ」と笑っている。
「えっ、なにがはいってるって?」
「マガリーンだよ」
「ははは」
「マガリーン、マガリーーンかな?、マガリイイイン?」
「(言い方じゃないがな!)マガリーンでいいんじゃない?」
「あっしょうか、うんうん、マガリーン、マガリーン」
・・・いつまでマガリーンと言っててくれるかな

11月6日(火)
昼の部休みなので、のんびりさせてもらった。ふーーーっ、のんびりしすぎて夜の部遅刻しそうになった。うーーーっ。忠信編は最初の45分くらいは用がないから開演までに楽屋入りすれば良い。がーーーーっ。それがかえって仇となる。にーーーーっ。まだいいや、まだいいやってのんびりしちゃうんだよな。げーーーーっ、時間ないのに乗り過ごしてしまったあ、べーーーーっ。どしよどしよっ!それでもなんとか浅草につきダーーーッシュ、だーーーーっ。なんとか到着、くーーーーっ。帰りの電車では居眠りして乗り過ごす、ぐーーーっ。ま、これはいつものことなのであわてない。なんか行きは一時間ちょっとで着くんだけど、帰りは二時間はたっぷりかかっているぞ、ぞーーーーーっ。

11月7日(水)
あわただしいぞー。9時に出発。地下鉄乗り継いで10時過ぎに浅草着。ちょっと一息いれたいなぁ、コーヒー飲みたいなぁとおもいながら歩きはじめたけど、なんかどこも今ひとつということで中村座に着いた。今日は昼夜ともに弾くぞーー。

11月8日(金)
営団赤塚から有楽町線で飯田橋へ行き大江戸線に乗り換えて蔵前まで行く。ここで浅草線に乗って浅草へという道のり。二回の乗り換え。できれば一回の乗り換えで行かないものかと調べたが、どう考えても二回乗り換えなきゃいけない。しかも蔵前の乗り換えでは一度地上にでる。なれればなんともないが、なんか損した気がする(なんで損した気になるのだろ?)。

行きはいいんだけどね、帰りなんよ。浅草から蔵前はひと駅なの。乗り越しちゃうんだよなぁこれが。つかれた身体でフーっと乗り込んでドカッと座ると、ふた駅み駅なんてアッという間にすぎちゃうんだもの。やっとのことで蔵前に戻ってきて表歩いて大江戸線に乗る。これもすいてるからドサッと座ってしまう。飯田橋までたったの9分。よ駅ご駅乗り過ごす。だって寝ちゃうでしょ。寝ちゃうさぁ、寝ちゃうよ。行き過ぎて戻ってくる電車で、また寝ちゃうこともある。んでもって飯田橋からの有楽町線はたいてい混んでるのでたってるでしょ。営団赤塚につくと、やたらに時間はたってるし、疲れもたまってるしで散々よぉ。笑っちゃうよ、2時間くらいかかって帰ってきてんの。浅草まで1時間弱で行くのによぉ。げに地下鉄はおそろしい乗り物じゃ・・・

11月9日(金)
ひどく寒いよ。雨がザーっと降ると仮設小屋の中村座はすごい音がする。これも風情ですね。今日はヘリが飛んできた音が聞こえた。無線をひろっちゃったらしく客席のスピーカーから無線の会話が流れた。これも風情か。「戦国自衛隊(なつかしいなぁ、いや、知っている人だけでいいんですよ)」みたいで良いと思った。これが芝居なんだな。芝居に浸ろうと思えば入りこめる。気をとられたいなぁと思えばヘリの音や雨音が気になる。どちらも選べる。変な言い方だけど、良いものだなぁと思った。

11月10日(土)
雨ですよ雨。けっこうなふりですよアータ、えー。やだなぁ、雨。稽古場でお弟子さんのお稽古したあと、いつものように地下鉄に乗る。浅草ついても雨が降ってる。中村座の開場時間近くになってしまった。お客さんで道もこんでいる。黒みす寒いかなぁぁぁ?楽屋到着。早足であるいてきたから身体が熱い。でも黒みす行ったら寒いんだろなぁぁぁ?なんて、こわごわ弾いていたが、おもったより寒くなかった。わからないもんだねー、よめないもんだねー。


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