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鉄九郎の青?裸々な日常 第69号


2002年2月16日〜28日

リアルな夢

2月16日(土)
劇団文化座・サンシャイン劇場提携公演「瞽女さ、きてくんない(ごぜさきてくんない)」を見に行く。すごいものを見せてもらった。芝居というかなんというか。芝居なんだろうけど。幕が開いた途端に引き込まれた。あの人の演技がどうとかなんて考えらんなかった。入っちゃった。泣くに泣いた。三味線を弾くということ、音楽をやっていくということ、人でいること、人と音楽ということ、長唄三味線と僕ということ・・・・そして「生」ということ。言葉にしたら薄っぺらだ。もっとアツいものがズシーンと来た。「我(が)の三味線じゃいけない」ということがすこーしわかった気がした。

(編集部注)
  • 瞽女というのは、一座を組んで村々を回って唄や三味線などの芸をひさいだ盲目の女旅芸人達のこと。芸の修業はとても厳しく、その上、生涯夫を持つことも禁じられていました。ほんの何十年か前まで、そういう生き方をした女性達がいたのです。最後の瞽女といわれる小林ハルさんらのCDも出ています。興味のある方はぜひ聴いてみて下さい。
  • CDタイトル「名人による日本の伝統芸〜越後高田瞽女」「最後の瞽女 小林ハル 96歳の絶唱」「瞽女うた/長岡瞽女篇」「瞽女うた/高田瞽女篇」
  • このお芝居には、津軽三味線の初代高橋竹山さんをほうふつとさせる役柄で、邦さんのお兄さんである青木和宣さんも出演されました。
  • 青木さんや瞽女を演じる女優さん達はこの公演のために稽古をして、実際に劇中で門付け唄や瞽女三味線を演奏しました。三味線指導は邦さんが担当しました。


2月17日(日)
今年も田柄幼稚園の展覧会の日がやってきた。なにより楽しみなのは、年長さんたちの「二文字習字」。こどもたちが好きな二文字を一生懸命書いてある作品なのだ、たぶん。たぶんと言うのは、うちの娘は年中なので、「二文字習字」ではないから、どんないきさつで書いているかは知らない。娘たち年中の作品もおもしろいが、とにかく年長の「二文字習字」が見たくてワクワクする。「うま」「くま」「ねこ」「いぬ」など動物シリーズ。「うま」は今年の干支でなければ「くま」「ねこ」「いぬ」よりは考えづらい動物だろうな。「うみ」「にじ」「そら」「ほし」なんて子どもらしい。「かぜ」「ゆき」「あめ」「ゆめ」か、ちょいとロマンチックな感もあるな。「こま」「たき」「かみ」「たね」「つる」、児童と言う感じがするねぇ。「めし」、きたねきたね、いいね。「くつ」「いし」「ごみ」「へび」って下ばっか見てるな。「ぱい」「ぱん」ってカタカナじゃん。「はり」ってのは稼業に関係あんのかな?「あべ」、名前じゃん。来年、我が娘はなんと書くのだろうか?  

2月18日(月)
12月の事故以来、娘は自転車にあまり乗っていない。今日はいいお天気だし僕は歩きで娘は自転車で出かけてみた。久しぶりに自転車に乗る娘は、うれしいのだろう、ずーっとパタリロのような顔でこいでいる。しかも12月のときとは比べ物にならないくらい速い。僕は早足かジョギングでないと追いつけないくらいだ。おまえ実はこっそり鍛えてたんじゃないか?「もうこわくないよ」と言っている。「どうして急に?」と聞くと「じぶんでもわからないよ」とこたえている。これが真実なんだろうな。成長ってすごいな。

2月19日(火)
「おとうさんが帰ってきてるわよ」
「えっ、おとうさんがっ」
父は一昨年の9月に亡くなっている。お彼岸にしちゃあチト早いなぁなどと思っている。
確かに父がいた。赤のセーターに黒の薄手のジャンバーを羽織っている。
「もう白髪になってもいいんだけどなぁ」
といいながら無言の若さをアピールしている黒々とした艶やかな髪。いざ目の前にいるとなにから話たらよいものか。父も久しぶりの下界にウキウキしている様子もなくいつも(?)のように過ごしている。なんとはなしに様子を見ていると二、三軒先に用事があるのか出ていった。
妻がササッとよってきて
「話したらいいじゃない」
と言う。うんそうだな。でもずっといそうだしな。あわてなくてもいいかなとも思ったが話しをしないのも不自然だしな。とか思ってるうちに父が帰ってきた。
「おとうさん、おとうさんが死んじゃったときってさ、俺外国に行ってたじゃない。なんでいないときに死んじゃったの?」
「うん、もういいかなって思ってさ」
「えっ、どういうこと?」
「もうアッちゃん(=あつし=鉄九郎)はやっていけるだろうと思ってさ」
「ああそういうことか・・・・あっ、おふくろに会った?」
「いや、それがまだ会ってないんだよ」
「どうして?会えないとこにいんのかなぁ?」
「いやっ、同じ仏様んとこにいんだとおもうんだけどね。ま、あわてなくてもそのうち会うだろ」
「はぁ、時間はいっぱいあんのかぁ。なんか呑気なんだね。けっこういそがしかったりするの?」
「こっちにいたときと変わらない感じだよ」
「ふーん」
「今、ここに20万円持ってるから、それを最終的に必要なものに使えばいいよ。あとはだいたい俺がいなくてもやっていけるだろ?」
うーん?・・・・・目が覚めた。
大黒柱になってかなきゃいけないんだよなぁ。いや、大黒柱じゃなきゃいけないんだ
なぁ。いやぁ、リアルな夢だった。

2月21日(木)
朝の渋滞にあいながら国立劇場の稽古場へむかいます。暖房いれると暑いな。今日は良い天気であたたかな日なんだろう。国立劇場の駐車場でヒロタケ(杵屋五丈)に会った。久しぶりだなぁ。
長唄協会演奏会のための下ざらいなのです。各流派で一曲ずつやるという感じのお祭りなんですが、今年は我が松永流での演目はないのです。出演しないのですな。孝次郎さん亡くなったし、家元も思うところがあったのでしょう。では、なにに出演するのかというと、演奏会の最初の演目に各派合同で一曲やるというのがあって、それには松永として出演するのです。総勢60余人かな。ウチは唄/忠次郎・兵衛、三味線/鉄九郎・忠一郎・和寿三郎というメンバー。今回の演目は「勝三郎連獅子」。
各派の若手が出演するんですけどね。僕も随分と年配の方になったなぁと思いますよ。確実にね。正直言って、名前とかわからない若い人たちもいる。「(8月の日本橋劇場「伝の会大勝負 えっ?マジ?!」公演で)棒しばり踊るんだってね」とか結構言われた。よしよし、広まってるぞー。

2月22日(金)
お稽古日。なんか久々なかんじだなぁ。あたたかい1日だ。ひょんなことから90年の伝の会のビデオを観る。わ、わかーい。く、邦さんほそーい。三味線の弾き方も今とは違うな。

2月23日(土) 名取り式
よいお天気になった。僕のとこからお名取りさんを出すことになり本日家元宅で名取り式を行う。家元と鉄十郎師匠立ち会いのもとにおごそかに行われた。自分の名取り式を思い出した。鉄五郎家元と鉄十郎師匠とさかずきを交わした。緊張して床の間の花瓶を倒した。はずかしー。あれから20年。僕を師匠にもった子が名取りになる。「おめでとうございます」と僕にも言っていただいたとき、僕のための式でもあることに気がついた。

2月24日(日)
あたたかな日曜日。近所の梅林公園に行く。なんかのどかだなぁ。稽古場の梅もいい香りをただよわせている。

2月25日(月)
今年はちょっと異常に暖かいらしい。花粉もとっくにとんでいて花粉症の方にはつらい年になった。あたたかいのはありがたいが、気をぬいて薄着なんぞしていると夜の冷え込みに風邪をひく。風邪はあいかわらず流行っている。  

2月26日 長唄協会演奏会
今朝はグッと寒い。8時にやっとこさっとこ起きた。もう一回寝ちゃおうかなぁという誘惑と戦いながら。9時前に出発。渋滞でなかなか進まない道。それでもなんとか10時に国立劇場に到着。コーヒー飲む時間ないかなぁ。さきに着替えちゃおうっと。
九「あ゛っ、忘れたっ!」
某「帯ですか?」
九「うん。お、帯を忘れた・・・・・えっなんで帯だってわかったの?」
某「いや、下をむいてらしたから・・・」
うーん、スゴイ洞察力だ。三味線弾きはこうでなきゃいけない。
某「売店で売ってますよ」
九「へー、売店で売ってんだぁ。買ってきてーー」
楽屋での出来事である。あいかわらずそうぞうしい私である。
ヒロキ(忠次郎)が
「下帯だけして袴はいちゃえば」
という意見に従い、ヒロキに下帯を借り袴をはく。なんだかおちつかないが、ま、いいか。
10時45分舞台稽古。12時開演。モニターなしで60余名がピタッと揃って演奏すんだから大したもんだよなぁ、などと感心しながら演奏終わる。おつかれさーん。
この模様は8月に伝統文化放送でオンエアーされる。
今日のお仕事終わりでやんす。しばし雑談して帰路にむかう。めっちゃ眠気がおそってくる。帰宅してすぐに昼寝。アッという間に2時間たち、やっとコーヒー飲んで、自転車にまたがり踊りの稽古にむかう。

2月27日(水)
歯の治療も順調に進んでいる。歯の磨き方も教わったりして毎晩お風呂でまぬけ面しながら歯の掃除をしている。
「歯を治療するときドキドキしちゃってさぁ」
と話していたら、娘が
「いっしょにいってあげようか?」
と言ってついてきてくれた。
本でも読んで待っていたかなと治療を終え待合室に戻ると神妙な顔をしてまじめに椅子に座っていた。
「おっ、本読んでるかなと思ったのに」
「いやー、パパがいたいよーとかいってるこえがきこえるかなぁとおもってさ」
「ありがとうよ。おかげで今日は痛くなかったよ」
「うん。またついてきてあげるよ」
・・・なんだか大人っぽいな。
「はい、抱っこしてぇ」
・・・なんやねん、やっぱり子どもかいっ。

2月28日(木)
小雨が降ったりやんだり、寒いと思っていたら意外に暖かかった日。稽古場の梅がいちだんと華やいだ。今年の梅はとりわけきれいだ。


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